伊助のよもやま話
昔恋しい銀座の柳 大正末に生まれ昭和に育った私は、題名は忘れたがこの歌がとても耳についている。 昔の歌って、なぜこんなに恋しく思うのだろう? それは人によって違うと言う人もいるだろうが、あの時分を知っている人は殆んどといっていい位にこの歌が好きだ。男も女もみんなが好んだ。もう何人も居ないだろうが、この歌を聴いて涙する人もいるだろう。 今の歌は、このように何十年も心に残ることがない。それは世の流れで、全てが前へ前へと進むことを大事にし、人もそれに追いついて行かないと遅れると思うからだろう。 私たちの扱っている建築資材も歌と一緒で、情があって優しく風流なものとして、資材そのものがよく売れ、流行った。家を作る人も気持ちを込めて優しく和やかに作ろうとし、買う側にもその気持ちが伝わり、よく売れた。 今は建築も見栄えの良い物が建ち、風情の有るものとされた材料が使われなくなった。それにつれ、私たちはいらだっている。 歌のひとつも唄っている時間がない。生きていく工夫をしなければならない。目をつむって時代に合わせたものを作らなければならない。 「これは本物ですよ」と言って売っている時代ではなくなったなと、つくづく思う。 昔の歌でも唄って昔を偲び、毎日毎日を世の中に合わせて生きていこう。 ああ、昔恋しい銀座の柳 今の…………?なんと書こうか。 兎に角、昔が懐かしいね。 |