伊助のよもやま話
忘れられた杖 杖は、商売柄、竹に定まっていると思ってしまう。しかし、山伏さんやお坊さん達は、木の杖で修行をしておられる。 今は色々な素材の杖があり、それぞれを使いこなす事によって、値打ちが出るものだろう。 竹の杖の特徴は、手軽で手近というところだ。昔は、嫁入りには必ず杖を持って行き、お婿さんの家に入る時に、その杖を折って入るというシキタリがあった。 また、葬式の時には、杖をお棺の中に入れて一緒に焼くということが実行されていた。 共に、竹の長さは、四尺二寸。「シニ」となって帰って来ないように願ったゆえんだ。 今はこのようなシキタリも忘れられて、お嫁さんはよく帰ってくる。きっと、杖を忘れるせいでは……? この間、新聞社の取材で「水戸黄門」の杖について、色々なことを聞かれた。 黄門さまが持つのによく似合っているあの杖は、なぜ、あの竹になったのか?産地はどこなのか? 私の答は、お客がよく買う竹の杖を私が選び、すすめたこと。また、産地は京都の西山にしかなく、なかなか適寸なものが取れないので選び出すのに苦労することを伝えた。 竹の杖が、黄門さまの姿に欠かせないものになっているのは嬉しいかぎりだ。 杖をたとえて、「世はさかさまの竹の杖」と謡曲に謡われたり、ことわざでは「杖にすがるとも、人にすがるな」「転ばぬ先の杖」などがある。 私たちも手近にある杖を頼りに強く生き抜きましょう。 |